固定残業手当を導入したい
固定残業手当導入手順
1. 社員の同意を得る
2. 直近1年の残業時間を確認する。
3. 2を参考に固定残業手当として設定する残業時間を決める。
(36協定は必要です。月30時間なら年間360時間に、月45時間なら年間54 0時間になります。協定の範囲内で定めましょう。)
4. 社員ごとに3の時間残業したものとして残業手当を計算する。
5. 端数を整えるなどして固定残業手当金額を確定させる。
6. 社員に制度導入の周知を行う
7. 個別に給与額(固定残業手当を含む項目ごとの金額)と含まれる残業時間を明示 する。
固定残業手当導入のポイント
1. 何時間分の残業を含むのか明確にする。
2. 勤怠管理は省略しない
3. 設定時間を超過した残業手当は支給する
4. 給与項目を「固定残業手当」等わかりやすい名称にし、基本給には組み込まない
5. 就業規則、あるいは給与辞令等で「〇時間分の時間外手当を含む」と明記する。
4の基本給に含む形態で支給する場合、労働基準監督署の調査が入ったときに残業 手当としての支給を否認され「残業手当を含んでいるはずの基本給」をベースにさら に残業代の支給を命じられたケースもあります。
仕事がそんなにないはずなのに社員の残業時間が多い(残業手当が高い)場合
労働者にとって「残業」というものは最初のうちは嫌なものです。1日8時間という労働時間が決められているのに、9時間、10時間と働かされるわけですから嫌がるのは当然です。
しかし残業が定例になってくると、社員の気持ちも変化してきます。残業代が支給されるので収入が増えます。それが毎月のようになると、その増えた給料が「私の給料」になっていきます。逆に残業がなくなると「給料が減った」感覚になり、給料を取り戻すために残業をするということになり、無理に仕事を作ってでも残業をする社員も出てきます。中には会社にいるだけで仕事もしないで残業申請をする問題社員もいます。
仕事がそんなにないはずなのに残業が多いケースとしては
1. 上記のように生活費を稼ぐための残業
2. 誰かの残業に付き合っている残業
3. 上司が帰らないから帰りにくくて行う残業
4. 当人の仕事の能力が低い、要領が悪い。
などが考えられます。
2と3については、もしかしたらそういう社風、暗黙のルールになっているかもしれません。ミーティング等で注意していきましょう。1についてもミーティングで注意して解消されることもありますが、「仕事がある」と反論され押し問答になってしまうかもしれません。その場合有効なのが「固定残業制」です。
とある会社で、月平均30時間程度の残業があったため、30時間分の固定残業手当を支給することにしました。当初の目的は「給与計算の合理化」です。本来30時間分の固定残業手当を支給していたとしても、30時間以上残業した場合はその超過分を支給しなければなりません。しかしその会社は勤務時間の集計すらやめてしまいました。法律的にはアウトですが、確かに給与計算事務はスリム化されました。
数カ月経過すると想定外のことが起きました。みんな毎月30時間程度は残業していたのに、徐々に定時で帰る日が多くなり、勤務時間を集計してみると10時間も残業していません。つまり「残業してもしなくても給料が同じなら残業しないで自分の時間が欲しい」ということです。それで生産性が落ちたかというと、大して変わっていません。それまで頑張れば8時間でできる仕事を9時間10時間と延ばして仕事をしていたわけです。
結局その会社は、しっかりと成果を上げられる人には昇給して、そうでない人には降給を含めて厳しく対処し、固定残業制を廃止しました。今も多い人でせいぜい10時間程度の残業で済んでいます。